後遺症を自覚していないと?
自分の足が麻痺している事を自覚せずに歩いたらどうなるでしょうか? 麻痺があったら、今までと同じようには歩けませんから、転んで頭を打ってしまうでしょう。
では、記憶できないことを自覚せずに仕事をしたらどうなるでしょうか? すると、上司から指示された覚えが全くないため、「聞いてません」と主張し、頻繁にトラブルになります。
後遺症を自覚していると?
足が麻痺していることを自覚している人は、杖を持っていない限りは歩かないでしょう。
同様に、記憶しにくくなっている自覚があれば、メモを持って仕事に臨みます。また、「今、何をする時間だっけ?」と不安に思ったら、メモを確認するようにもなります。
このように、麻痺の程度も変わりないし、記憶の程度も変わりないのに、自分の後遺症を自覚しているだけで、自力でできることがグッと増えます。
病識の4段階
後遺症を否認
自分の後遺症を「否認」している段階にいると、リハビリもしないし、工夫も取り入れられません。つまり、後遺症を軽くすることができません。生活もうまくいきませんし、仕事をしたり、運転をすることは到底無理な段階ですが、「運転できるんだ!」と主張したり、うまくいかないことを家族や病院のせいにしてしまいます。
自分の後遺症を知っているだけ
「みんなに○○ができなくなってるよと言われます」と後遺症を「知識」としては知っているけれど、他人事のように思っている段階にいる人もいます。この段階の人は、リハビリはやるけれど、普段の生活の困りごとは変化しません。何度も同じ指摘をされて、その都度「そうですね」と後遺症を認める発言はするものの、全く行動が伴いません。そのため、「もうそろそろ運転しようと思うんです」と、発言したりします。
自分の後遺症を自覚している
「私は○○が苦手だから、生活で困っています」「◯○が出来ないから、仕事なんてまだまだできません」と、自分が以前と違うことはよく分かっている段階の人もいます。この段階の人は、何をやるにも不安なため、なるべく後遺症の影響が出ないように振る舞えます。しかし、元の生活に戻ろうとした時、「後遺症があるから無理です」と、その先へ進めません。その結果、もう少しで一人暮らしができそうなのにやらず、もう少しで仕事にも戻れそうなのに、戻りません。
自分の後遺症を制御している
この段階になると、自分の後遺症を深く理解し、生活や仕事に後遺症の影響が出ないように工夫できます。元の職場には戻れなくても、どんな仕事ならできるかを理解し、もう一度働くことができます。また、自分は運転できる能力があるのか、それとも運転はまだ早いのか、自分で判断できます。
まとめ
後遺症を制御できる段階になると、生活も自立できるし、仕事もできるし、運転もできるかもしれません。後遺症を認めることはとても辛いことですが、そこを乗り越えない限り、一歩も前に進めません。
もし、後遺症を受け入れることができると、その一歩は、とてもとても大きな一歩になることでしょう。